第15回 新規事業を妨害するライバルの調略(陸王の第9話より)

 

「調略」というキーワードをご存知でしょうか?

 

その意味をネット辞書で調べると「策略をめぐらして敵をまかしたり内通させたりすること」や「はかりごとにより相手をおとしいれること」と記されています。

 

戦国時代のドラマで黒田官兵衛のような軍師が、敵国の周囲にいる豪族や小領主と面談し、本領安堵やほうびをエサにして寝返りを誘うシーンがあります。調略によって、敵国に協力する豪族や小領主が味方になってくれれば、自らの兵力を失うことなく勝つことが可能になります。

 

では、調略は戦国武将だけが行うものでしょうか。現在のビジネスは競争環境の中で行われています。表には出てきませんが、裏では泥臭い調略が行われているはずです。ここでは、こはぜ屋のライバル企業であるアトランティスが行ってきた「調略」を振り返ってみましょう。

 

 

5話の中でアトランティスは、茂木選手のために新型R2を製作しています。営業担当の佐山が、現物を茂木選手に直接手渡しています。さらに、新型R2を入れた紙袋の中に「こはぜ屋の信用調査情報」を入れているのです。当然、茂木選手は信用調査情報を見るでしょうし、動揺させて陸王から新型R2にチェンジさせようと目論んでいるのです。

 

6話では、小原部長がタチバナラッセルの橘社長と面談しています。こはぜ屋との間で行っている取引量の10倍を橘社長に提示します。さらにアトランティスは世界的にビジネス展開しているので、今後100倍くらいの取引も有り得ることを話します。小原部長から耳障り良い話を聞いた橘社長は、寝返ってしまいます。

 

8話ですが、茂木選手はダイワ食品陸上部に所属していますが、財政面で厳しい状況になっています。小原部長は、茂木選手専用モデルとしてアッパー素材を変更し、ソールに改良を加えた新型R2を茂木選手に提示します。今後、新型R2を履いてくれるのであれば、ダイワ食品陸上部に資金援助することを申し出るのです。

 

そして今回(9話)において、小原部長はフェリックスの御園社長を会食に招待し、取引を持ち掛けます。買収する予定のこはぜ屋の事業を整理した後、シルクレイを新型R2のソールに使わせて欲しいというものです。この時の御園社長の笑顔が気になりますが…。

 

 

アトランティスの小原部長と佐山が行ってきた調略は「商道徳としていかがなものか?」というケースもありました。ただ、法律に違反していないので、誰からも文句を言われる筋合いはありません。アトランティスは外資系企業なので、目に見える成果を短期で達成しないと、自分の地位や処遇に影響するのかもしれません。

 

彼らを擁護するわけではありませんが、実際のビジネスであれば、ドラマのような「調略」が日常茶飯事で行われているはずです。さらに言えば日本は甘く、外国はもっと厳しいかもしれません。宮沢社長の対応と行動は、アトランティスから見れば隙だらけだったでしょう。

 

 

さて、9話のラストで宮沢社長は御園社長に対して買収を断って、事業提携と資金援助をお願いします。「調略」ではなく「交渉」によって。

 

企業買収によって、次々と自社に取り込んだ結果、フェリックスは世界的な大企業になります。ただ、買収された企業が用済みになったときには整理されて無くなっているのです。つまり、こはぜ屋も用済みなれば、会社は無くなってしまうのではないか。それを怖れた宮沢社長は企業買収ではなく、事業提携と資金援助を求めてきたのです。

 

事業提携のような面倒なことはやりたくないから買収を提案したのだ、と言って御園社長は怒りをむき出しにします。ここで「交渉」は決裂。この後、こはぜ屋はどうなってしまうのでしょうか?