第13回 新規事業を続けていくための社長の覚悟(陸王の第7話より)

 

 

新規事業を続けていくと、いろいろな問題が発生します。宮沢社長も悩み苦しみ、心の休まる暇がありません。

 

前回(第6話)のラストではアッパー素材になる原材料を供給しているタチバナラッセルの橘社長から取引を止めることを宮沢社長に伝えます。銀行から橘社長の動向情報を入手していた宮沢社長は落ち着いて対応しますが、商道徳に反する行為に怒りを覚え、もう二度と取引しないと宣言します。タチバナラッセルが取引をやめることにしたのは、アトランティスが行った妨害工作によるものです。

 

今回は、シルクレイ製造機が暴発して壊れてしまいます。これでシルクレイを作ることはできなくなりました。代替機を投入するためには1億円の資金が必要であると、飯山は宮沢社長に伝えます。ただ、通常の資金繰りでも苦労している中で、さらに1億円の資金を調達できるでしょうか。

 

自宅で晩酌している宮沢社長に奥さんが声を掛けます。「今度ばかりは無理しないほうがいいんじゃないの。諦めるのも社長の仕事って、昔、お父さんも言ってた」この言葉に全く悪気はありませんが、問題解決になっていません。ただ、宮沢社長の悩みが増えただけです。まあ、会社が傾くことで熟年離婚しないだけ良いかもしれませんが。

 

宮沢社長と富島専務は銀行に出向いて、1億円の設備資金融資をお願いします。支店長からは「はっきり申し上げます。この事業計画は無謀すぎます。お止めなさい。銀行には『貸すも親切、貸さぬも親切』という言葉があるのですよ。宮沢社長、この設備投資はご融資できません」と断られてしまいます。年商7億円のこはぜ屋に1億円の債務が増えるのですから、誰が見ても無理だと判断するはずです。

 

沈痛な面持ちでチーム陸王のメンバーが集まっています。シューフィッターの村野と宮沢社長が、これからの陸王について意見を戦わせています。

 

村野:「シルクレイは、陸王は諦める、ということですか」

 

宮沢:「諦めるとは言ってません。しかし、銀行が金を貸してくれない以上、もうどうしようもありません」

 

村野:「同じことじゃないですか。そんな簡単にどうすることもできないなんて言わないでください。アイツらは命をかけて走ってるんですよ。生きるか死ぬかの戦いをしているんだ。そういう彼らと付き合っていくためには、我々だって命をかけるぐらいの覚悟が必要なんだ。そうでなければ安易にシューズなんか供給すべきじゃない。私が聞きたいのは、宮沢さんに『その覚悟があるか?』ということです。」

 

宮沢:「私だって、もちろん、できることならサポートしたいと思っていますよ」

 

村野:「できることなら? 宮沢さんはできないと思ってるんですか。答えてください」

 

宮沢:「現実的には厳しいかもしれない…」

 

宮沢:「陸王を作ることは諦めていない。しかし、銀行が融資してくれない以上、もうどうすることもできない」

 

村野:「もうけっこうだ。どうやら私の見込違いだったようだ。その程度の考えで選手に近づこうとしたのなら、それは陸上競技者に対する冒涜(ぼうとく)だ。これ以上、ここで私がやるべきことはありませんね」カバンを手に取り、村野は出ていきます。

 

ヒト・モノ・カネの側面で、宮沢社長は窮地に追い込まれます。陸王プロジェクトを続けていくか、それともやめてしまうのか。決断しなければなりません。村野はキーになる言葉を発しています。

 

 

「その覚悟があるか?」

 

 

つまり、どんな状況になっても必ず成功させるという気持ち。それが経営者の覚悟として決まっていることが必要ということです。足袋を作っている会社が、知識やノウハウが無いなかでランニングシューズを作るわけですから、苦労するのは当たり前。そんなことは事業を始めたときから覚悟しておくことです。そして、陸王を成功させたいと「本気」で思い、死にもの狂いで行動すべきはず。中途半端な気持ちのまま事業を始めた宮沢社長に改めてその覚悟が問われているのです。

 

特に資金に関する悩みや苦しみは、事業開始から付きまとっていますから、考え方や視野が狭くなってしまうことは理解できます。まずは深呼吸して、全体を俯瞰してから問題点を整理し、銀行借り入れ以外の資金調達を考えてみるべきです。

 

銀行を辞めてベンチャーキャピタルに転職することを、坂本は宮沢社長に報告します。これは合図であり、きっかけかもしれません。他にも方法はあるはずと。

 

帰宅すると息子の大地が居間でスーツのまま寝ています。「風邪をひくぞ」と声をかけますが起きません。アッパー素材を提供してくれそうな会社を見つけて訪問しますが、うまくいっていないこと。自らの就活をしないで素材会社を訪問していること。娘の茜からその話しを聞いて宮沢社長は愕然とします。自分は諦めかけていたのですが、大地は諦めていない。自分がアッパー素材の会社を見つけると宣言し、その実現のために奔走していたのです。宮沢社長よりも大地のほうが覚悟を決めて行動していたのです。

 

大地が作った会社リストには手書きのコメントがびっしり書き込まれていました。それを見た宮沢社長はどんな気持ちだったでしょうか。

 

 

この時、宮沢社長の「覚悟」が決まりました!