第9回 新規事業における資金確保策(陸王の第3話より)

 

 

「これ以上、続けるべきではありません」

 

富島専務は宮沢社長に警告とも取れる言葉をかけます。今回のお話しの中で、富島専務の過去が明らかになりました。先代社長時代、新規事業の資金を工面するために、富島専務は奔走します。最終的に事業は失敗し、本業の縮小が余儀なくされます。

 

先代社長は富島専務に「なぜ、途中で止めてくれなかったのか」という言葉をかけたそうです。この時、先代の暴走を止めることができなかったという強い思いが、富島専務の中に残っているはずです。ですから、今度は宮沢社長の暴走を止めたいという思いが、言動として表れているのでしょうね。

 

富島専務から言葉をかけられても、陸王を完成させて拡販し、新規事業を成功させるという宮沢社長の決意に変わりはありません。ただ、これからも資金面で苦慮することが予想されますので、現実的な資金確保の方法を3つ提示します。一つ目は経営革新計画の承認企業を対象にした融資制度。二つ目は新規事業に関連する補助金制度。最後はクラウドファンディングです。

 

 

1.経営革新計画の承認企業を対象にした融資制度

国が法律を定め、都道府県が実施する経営革新計画。新規事業や新製品開発を行う中小企業が経営革新計画を作成し、都道府県に申請して承認された場合、様々な施策を受けることができます。施策の中には日本政策公庫が実施する「新事業活動促進」という低利融資(基準金利よりも低利)があります。承認企業が融資対象者ですが、当然ながら融資審査はあります。

 

第1話で宮沢社長は埼玉中央銀行に出向いて、新規事業に拘わる融資をお願いしています。その際、企画書もしくは事業計画書を持参しているはずです(作っていないのであれば、融資を依頼する資格はない)。その内容をカスタマイズして、経営革新計画を作成・申請すればいいと思います。

 

経営革新計画はそれほど難しいものではありません。自力でも作れるはずです。ある程度できた段階で、銀行員の坂本氏に相談すれば力になってくれるはずです。また、中小企業を支援する公的機関を訪ねてアドバイスを受けてもいいでしょう。

 

承認後は最寄りの日本政策公庫の支店に出向き、融資の相談を行います。その時には陸王のサンプルを持参し、1200足の受注があることを伝えます。埼玉中央銀行の融資課長は宮沢社長に対して感情的になっており、1200足の受注について正しい評価をしていません。私は実績として評価できると考えています。

 

 

2.新規事業に関連する補助金制度

国・都道府県・市町村では、中小企業が行う新規事業や新製品開発について補助金制度を実施している場合があります。例えば、国(経済産業省)では「ものづくり補助金」が有名で、数多くの中小企業が利用しています。都道府県・市町村においても、それぞれの地域に応じた補助金が存在しています。

 

ネットを使って、こうした補助金情報を調査し、こはぜ屋として利用できるものがあれば積極的にエントリーするべきです。どの補助金の申請書においても、事業内容や新製品の内容を書く欄がありますので、既に作成している企画書もしくは事業計画書の内容を援用すればいいと思います。

 

なお、ほとんどの補助金は、新規事業や新製品開発の事業期間終了後にもらえる「後払い」です。さらに、申請額について100%補助されることはありません。半額補助や3分の2補助という補助率が多いので、ご注意ください。

 

 

3.クラウドファンディング

この先、陸王が商品化された場合、量産化や拡販のための資金が必要になってきます。開発資金を借り入れているのであれば、これ以上の融資は難しいと考えられます。そこで「クラウドファンディング」による資金調達を検討します。クラウドファンディングの内容や方法に関する説明は割愛しますが、陸王のユーザーやファンの方々に少額出資をお願いするものです。

 

マスコミやネットを活用した広報活動を地道に行います。そのプロセスの中で、陸王を履く茂木選手が大きな大会で復活優勝した場合、陸王の認知度は一気に高まります。その認知度に便乗して、クラウドファンディングを募集します。

 

例えば、1口10万円で1000口集まれば、1億円になります。応募者への特典として、茂木選手と同じデザインの陸王を優勝記念限定モデルとしてプレゼントします。他にもプレミアムな特典を準備すれば、話題になるので応募枠はすぐに埋まると思います。

 

 

今回は、資金確保にフォーカスしていました。資金確保の王道は銀行融資ですが、他にもやり方があるということを頭の片隅に入れておいてください。既存事業も含めて、事業資金の管理については早め早めに確保しておくことが重要ですね。

 

それから、宮沢社長は相手が誰であれ、怒りの感情が高ぶると冷静さを失います。相手が挑発してくるので、怒る気持ちは理解できますが、例えば、メインバンクの融資課長に切れるのは良くありません。

 

メインバンクを切り替えるつもりであれば、切れるのも良いかもしれませんが、これからも付き合っていくのであれば、絶対に短気をおこしてはいけません。