第8回 新規事業で考慮すべき知的財産権(陸王の第2話より)

 

 

誰がつくり、誰に権利があるのか。

 

第2話は宮沢社長とシルクレイの特許権を持つ飯山晴之(寺尾聰)とのやり取りが中心でした。この流れに乗って、今回は新規事業で考慮すべき知的財産権について、ドラマのエピソードを事例にしてお話しします。

 

1.陸王という名前と商標登録

宮沢社長は「陸王」という商品名を社員に発表します!

 

第1話のエンディングで開発しているシューズの名前が決まります(このコラムも、これ以降は陸王という商品名に統一します)。なぜ、陸王なのか。理由は定かではありませんが、意気込みとエネルギーを感じることは確かです。

 

ドラマでは描かれていませんが、陸王と命名したことで特許庁に商標登録しておくことは当たり前になります。余談になりますが、私自身、数年前に自分で書類を作成して商標登録を申請したことがあります。それほど難しいものではありません。やろうと思えば誰でもできます。

 

さて、陸王という漢字の縦書き・横書き、文字フォントや書体についても明確にして、商標登録する必要があります。まだまだ先の話になるかもしれませんが、海外で販売することも考慮に入れて、「RIKUOH」というようにローマ字表記についても、文字フォントや書体を含めて登録することを検討しておくべきですね。そして、登録申請と連動して、シューズを入れる箱のデザインや色についても考慮してほしいと思います。

 

さらに、こはぜ屋のシンボルになっている「丸印にとんぼ」のマークについても、商標登録していない場合は申請しておくべきです。マークの上か下に「こはぜ屋」もしくは「KOHAZEYA」という形で、屋号を入れても良いと思います。

 

 

2.製造方法にかかわる実用新案

陸王のアッパー部分は足袋の縫製技術を使っています。なので、従来のランニングシューズの製造設備では作れないと考えられます。既存シューズメーカーが、わざわざ類似品を作ることはないと思いますが、世の中に絶対はありません。製造方法やシューズの形状について、しっかり権利化しておくことも必要です。

 

製造方法の特許化が難しい場合、アッパーやソールの形状について実用新案を申請する等、実状に応じた対応が望まれます。権利化とは違いますが、実際の製造工程において簡単に作れないようしておくこと。つまり、特許や実用新案の公開部分以外で、作り方をブラックボックス化しておくべきです。

 

 

3.ソールにかかわる特許使用

第2話のエンディング、飯山晴之からシルクレイの特許使用が認められ、製造装置を使うことを提案されます。これで、ソール部分はシルクレイに決定します。ただ、アッパーとソールをとどのように圧着させるのか。そうした技術開発についても、今後の課題になるでしょう。

 

特許と製造装置の使用契約の詳細について、ドラマには出てこないはずです。実務的にみた場合、こはぜ屋の実状を飯山氏に理解してもらい、弁理士か弁護士からのアドバイスに沿って、双方が納得できる内容の契約書を作成してほしいですね。

 

 

ここまで、こはぜ屋の新規事業に関連する商標、実用新案、特許といった知的財産権についてお話ししてきました。こうした知的財産権をしっかり確保しておく理由は3つあります。一つ目は「商品や会社のブランド構築」のため、二つ目は「模倣品やニセ物に対する防衛」のため、最後は「会社としてのプライドと責任」のためになります。

 

まず、「商品や会社のブランド構築」によって、たくさんのライバルが存在するランニングシューズ市場において、差別化が可能になります。もっと分かりやすく言えば、ユーザーからの指名買いが実現するということです。

 

次の「模倣品やニセ物に対する防衛」ですが、大手ランニングシューズメーカーの工場の多くは、中国や韓国、東南アジアにあります。本物を作っている工場だけでなく、ニセ物を作っている工場も隣接していることがあります。陸王も国内で売れてくると、ニセ物が出回る可能性がありますので、しっかりとした模倣品対策を準備しておくべきです。

 

最後の「会社としてのプライドと責任」は、商品や会社を世の中に広報したり、広告宣伝したりすることで注目され、目立つ存在になります。その結果、会社としてのプライドが持てるようになり、社員のモチベーションも向上するはずです。同時に良い商品・サービスを提供する責任も伴います。これから先も研究開発を怠ることなく続けていく必要があります。

 

まだ、商品化されていない陸王ですが、知的財産権についても、しっかりと考慮しておくことが必要ですね。